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夏はノスタルジーの香りがする。
麦わら帽子にラムネ、夏休みや海水浴......そんな絵に描いたような夏の経験が私には無いのだけれど、それでも、夏にノスタルジーを感じてしまうのは夏休みの思い出が脳裏に焼き付いているからだろう。もちろん、私にも虫捕りやら花火やら人並みの夏の思い出もあるにはある。
しかし、私にとってノスタルジーを感じるものといえば『真昼の怪談』だ。ポイントは『真昼』ということだ。
薄く青い高い高い空、ぼってりとした重量感を感じる白い大きな雲。暴力的なまでに降り注ぐ太陽光で白飛びしたような 世界......そんな視覚だけでも暑さを感じる光景。しかし、そんな灼熱の世界の音は、分厚い窓ガラスに遮られてここには届かない。僅かに蝉の音が聞こえるくらいか。そんな窓の外の世界をクーラーの効いた涼しい部屋から外を眺めていると、窓の向こう側が、まるでスクリーン越しに観ているような、自分とは完全に切り離された別空間に感じられるのだ。
そんな夏の安全圏から怪談を聞く。それこそが私にとって最高にノスタルジーを感じる瞬間なのだ。
この感覚にはもちろん原体験がある。
インドア派だった小学生時代の私にとって夏休みは家の中で過ごす時間の方が長かった。テレビっ子でもあった私はよくテレビを見ながら夏休みを過ごしていた。休みの日をネットサーフィンで時間を潰している今と生態は変わっていないのかもしれない。
そんな夏休みの過ごし方をしていたのだが、一つ問題があった。そう、見る番組がないのだ。平日の昼間からアニメをやっているわけでもなし、仕方なく流れているワイドショーを見るのだ。ファンションやら東京での流行りやらそんな興味のない情報をとりあえず見ているのだが、当時の私でも興味をひく番組内のコーナーがあった。
それが『怪談』だ。
ワイドショー内のコーナーのためか学校の怪談や都市伝説といった子供だまし的な内容ではなく、職場での怪奇現象や、旅行先での不思議体験など、実体験ベースの大人な怪談だったのだ。それが当時の私にとっては大変興味を惹くものだった。それに、怪談を聞いてるとクーラーから吹き出る冷風がより冷たいものに感じる感覚、そして窓を隔てた暑さの滲む外界がより一層遠くにいってしまうような浮世離れする感じが大好きだったのだ。私は毎日、ワイドショーのその『怖い話』コーナーを楽しみに夏休みを過ごしていた。
ただ、当時の私の記憶は、少し妙な形で整理されている。
頭では『怪談』としてカテゴライズしているのに、実際の記憶の断片を辿ると、「ヒトコワ」系の話が混じっているのだ。ヒトコワ系とは「やっぱり一番は生きている人が怖い」といったオチのことだ。有名なところでは、殺人鬼がベット下に隠れてたり、ストーカーが包丁を持って家を訪ねてきたりとかだろうか。そういった人の手によって起こされる系の怖い話を「ヒトコワ系」と呼ぶ。
そして、当時の私はその手のヒトコワ系の話に、ひどくガッカリしていた記憶がある。
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